モデル姐さん
後から来る「痛み」は、音を立てない。
50,000,000円──
大学・専門学校卒と高卒では、生涯に稼げるお金が平均で約5,000万円ちがう。これは厚労省「賃金構造基本統計調査」をもとに労働政策研究・研修機構が推計した最新の値だ。男性でも女性でも、学歴が分かれ目になっている。
労働は大体40年続く。40年は480ヶ月あるから、月々10万円の差だ。
そんなこと言っても、同級生といつも通りに過ごす君には響かない。でももし君が大学に行かないつもりだったり、行っても何をしていいか判らず戸惑っているなら、もしくは今大学一年生で授業がつまらなくて死にそうだとか、留年したとか、浪人生活が二浪目に入りそうなら、どうか、もう少し先まで読んで欲しい。周りがみんな大学に行かないと決めているなら、この話を君に伝えられる人は、君の身の回りにはいないから、こっそり読むといい。
高校卒業後、社会人の君の18歳の春。就職して初めての給料明細を手にした夜、君は気づかない。
23歳、仕事にも慣れ、経済力もついてきて、デートに夢中な君は、他のことに興味なんて持てない。
28歳、君は結婚しているかもしれない。卒業10周年の同窓会。5000円の出費が、少しだけ痛い。昔いっしょにコンビニで肉まんを買った友だちが、見慣れないブランドのスーツで現れたとき、胸のあたりが少しざわつく。でも幸せいっぱいの君は、まだ笑っていられる。
33歳、SNSを開くことは減った。ときおり思い出したかのように、Xで芸能人を叩く。——ふとテーブルを見ると、最近疎遠だった友だちからの、結婚式の招待状。海外から送ってきている。そういえば別の同級生は、大企業を辞め、最近起業したらしい。どうせうまく行くはずがないのに。
40歳、子供が中学校に上がって、親を病院に連れて行くことも増える。無理して買った車のローンと住宅ローンの返済が重くのしかかる。車両保険、火災保険、生命保険、がん保険、学資保険。人生はリスクでいっぱいだ。
50歳。給料はずっと上がっていない。子供は独り立ちした。ほっとする。しかし、家のローンはまだ半分しか返せていない。子供のいない家は広すぎる。定年まで働いても返すのは厳しい。車もだいぶ古くなったがそちらに回す余裕はない。75歳まで働けばなんとかなるのだろうか?君は計算する。もう地元を出て行った同級生達は連絡も取れない。どこで何をしているのかもよく判らない。住む世界が違うのだ。
65歳。定年して一息つくはずが、親の介護でかなりしんどい。自分も病気がちになってきた。とはいえ、自分が面倒を見なければ誰がみるのか。とても施設に預ける金なんてないのだから。そもそも、施設に預けるなんて親不孝者。
少子化の影響で、年金なんてほとんど支給されずに、君の人生はこの後も30年続く。子供が介護してくれないと詰む。
「毎月10万円」の差が、18歳の春から、静かに、でも確実に未来を削っていった。
君は中高の6年間で、いつ、それに気づけただろう。
後から来る「痛み」は、音を立てない。
夢の更新が止まる 持ち家、車、旅行、留学、転職——選択肢が “高めのガチャ” になり、気づけば「諦めること」が日課になる。 次世代への連鎖 教育費をかけられず、子どもがまた同じ壁にぶつかる。「自分と同じ」と言い聞かせても、子供の50年後までうっすら予測出来てしまう。胸に残るのはかすかな後悔。 理不尽なゲームオーバー 貯金の“クッション”が薄いと、病気や不況が来た瞬間にゲームオーバー。スタート地点が違うだけで、リスクは常に数倍 もし、月10万円が毎月毎月、空から降ってきたなら、これらの問題は全く起こらない。
労働は大体40年続く。40年は480ヶ月あるから、月々10万円の差は約5000万円になる。下品な言い方だが、全て金で解決出来る。
大学・専門学校卒と高卒では、生涯に稼げるお金が平均で約5,000万円ちがう。これは厚労省「賃金構造基本統計調査」をもとに労働政策研究・研修機構が推計した値だ。男性でも女性でも、学歴が分かれ目になっている。そこに理由なんてない。ただの残酷な、事実。
その5000万円は、大学に行かないと決めた君が、考え直すだけで手に入る。今なら。
途中からは、難しい。後半になるほど、どんどん難しくなる。
もし今日、未来をほんの少し書き換えられるなら
スマホの通知より先に、教科書を5分だけ開く。 目を背けず、未来を想像する。 明日の自分へメモを残す。——「5分続けろ」と。 君がまだ高校生なら、この“残酷さ”は物語のプロローグ、予知夢でしかない。この物語を書き換える力は、まだ君の手の中にある。